給与の形態には給与所得と事業所得があります。
一般的なサラリーマンが会社から給料を振り込まれることによって収入を得るものを給与所得と言います。一方で事業を立ち上げた社長が売り上げから得るものを事業所得といいます。
ここでは割愛しますが事業所得と給与所得では税金の引かれ方が全く異なります。事業所得の方が圧倒的に自由度が高く魅力的です。
医師は常勤で働く病院のほかにも収入の確保のためや診療の応援のために非常勤で働くことの多い業種です。その際は、周りに頼れる相手もおらず(特に麻酔科の場合は1人のことも珍しくない。)ある程度なにが起こっても自分の責任で働く必要があり、病院が守ってくれる保証もありません。
今回のテーマは外部の病院にバイトや非常勤で勤めて得ている収入を確定申告で事業収入として計上できるのかについてです。
非常勤先の給料を事業所得として計上できるのか
実はすでに判例もありますのでご紹介します。
麻酔科医が非常勤先で得た給料を事業所得として申告したが、最終的に給与所得とされた具体的な判例は、最高裁判所平成18年(行ヒ)第45号(通称「医師の事業所得の判例」)が関連する事例として挙げられます。
最高裁平成18年(行ヒ)第45号判決の概要
この判例では、非常勤の医師が勤務先から受け取る報酬を事業所得として申告し、その後税務署から給与所得として扱うべきだとの指摘を受けたという事案です。医師は、自分の診療報酬を事業所得として申告し、控除を大きく取ることを狙いましたが、税務署は、非常勤契約でありながら、医師が勤務先の指示の下で勤務し、報酬も給与形式で支払われていた点を踏まえ、給与所得として認定しました。
判決の要点
1. 契約内容と勤務形態:医師は非常勤で勤務していましたが、その勤務形態や報酬の支払い方法(給与)などが、一般的な雇用契約と大きく変わらなかったため、給与所得と認定されました。
2. 勤務先からの指揮命令:医師が勤務先から指揮命令を受けて診療を行っていたことが重要なポイントでした。独立しているとは言い難く、むしろ従業員としての性格が強いと判断されました。
3. 事業所得と給与所得の区別:事業所得に該当するためには、通常、独立して仕事をしていること、報酬の支払い形態が独立性を示していることが求められますが、このケースでは給与所得としての要件が充足しているとされました。
結論
この判決によって、麻酔科医を含む非常勤の医師が勤務先から受け取る報酬が、給与所得と認定される場合があることが示されました。非常勤であっても、勤務先の指示に従い、報酬の支払い形態が給与的なものであれば、事業所得ではなく給与所得として扱われることがあります。
この事例は有名で、診療場所や機材の提供を受け、集客(患者)の責任もない状況という点は麻酔科のみならず多くの診療科にもあてはまることです。医業は何かと制限が多いことからも、よりいっそう非常勤先からの収入を事業所得化しての節税は難しいと考えられます。
コメント